K I R I B A N




『やる』と言われて渡された長方形の箱をジッと見て…首を傾げる。
俺サマが一体なにをよこしてくれたんだか見当が付かない…ってか、アダルトグッズか?

箱を遠巻きに眺める俺を見つめ俺サマが溜め息を吐いた。

「開けりゃいいだろが。」

「あ、そうデスね。」

パッケージをガサガサと開き頑丈そうな箱を開けて……ん?
これは??

「でけぇバイブだろ?」

楽しそうに笑う俺サマをガン見。
箱の中には…金属バットとボール。
そして…グローブが二つ入っていた。

「これ…?」

「西野と一緒に遊べ。」

そう言ったきり俺サマはノートPCに向かってしまった。

「…ありがとうございます。」

「ああ。」

すげぇ…照れる。
いや、きっと渡した俺サマの方が照れてるに決まってんな?
なにより…あの人が楓の好みを覚えてて尚、その為に何かをしてくれたって事が嬉しい。

「楓。」

シンクで洗い物の真っ最中な楓を呼び手招き。

「ん?なに?」

「ちょっと来いよ。」

タオルで手を拭きながらやってくる楓に箱を指差し…それを覗き込んだ瞬間、満面の笑みに変わって。

「わっ!これ…どしたの??」

"野球少年"楓が黒い瞳をキラキラと輝かせる。
その反応が可愛くてまたニヤけてしまう。

「俺サマが、楓にくれるって。」

「え……えぇっ!?」

後ずさる程に驚くヤツを見つめて苦笑い。
何だかんだ言って一番世話焼いてくれてんのに気付いてねぇのか?

俺達の会話を聞きながらも相槌ひとつ打たない俺サマをチラ見して。
…まあ、本人もこんな感じだからしゃあねぇか?

「ほら、ちゃんとお礼しとけよ?」

「あ、うん…あのニイサン、ありがとうございました!」

真っ赤な顔して頭を下げた楓を俺サマがチラ見して…フッと笑う。
今だ!
この顔をちゃんと見とけ、楓!!
俺の念が届いたのか上手い具合にバッチリと二人の目が合った。

俺サマのそんな優しい顔を見るのが初めてな楓は…どうしていいか分からない様子で。
それがまた妙にツボに入る。

「ついでに"またお願いします"って言っとけ。」

そう言った俺に二人は苦笑いをした。





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あきゅろす。
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