K I R I B A N





濡れた身体に後処理を施し、沸かしたての風呂に二人して浸かった。

丸一日振りのセックスの余韻に浸る俺の足の間に座り寄りかかった智がおもむろに息を吐く。

「…辛いのか?」

合意の上とはいえ病人を抱いちまってからそんな事を聞く俺もどうだか。
振り向いた智の唇にキスをしてその細い身体をやんわりと抱き締めた。

「ん…大丈夫だよ?」

照れたように頬を赤くする智が愛しい。
髪を撫で額にキスをして肩口に唇を寄せた。

「お風呂に入りたかったから…ちょっと嬉しいんだ。」

はにかむ横顔を見つめて思う。
俺は…コイツが心底好きなんだ、と。

「調子はどうなんだよ?」

「ん、もう平気だよ?」

やんわりと笑う顔を見ながら眉を寄せる。
この『ダイジョウブ』を信用すると…ロクな事がねぇんだ。

そんな俺の心の声が聞こえたのか可愛い智が苦笑いしながら振り向いて。

「拓真が帰ってくる前に熱計ったら…三十七度だったよ?」

「…微熱あんじゃんか。」

ひとつ溜め息。

「…たく…?」

「上がったらとっとと寝るぞ。」

湯船から立ち上がり智を抱き上げて浴室を出る。
バスタオルを巻き付けた細い身体を折れる程強く抱き締めて。

「無理はすんなよ?昨日みたいなのはごめんだからな。」

「…はい。」

肌についた滴をタオルで拭きつつ唇を寄せて。

「お前になにかあったら嫌だ。」

「…うん。」

俺の胸に頬を寄せる愛しい智をキツく抱いて。

「ずっと…一緒にいたいんだよ。」

見下ろした智がゆっくりと瞳を閉じ…吸い寄せられるように唇を重ねた。

こんな事がある度、智が俺にとってどれだけ大事かと思い知らされる。
智がいなくても生きて行けるんだろうが…いない世界になんの意味もないから。

「愛してるよ。」

言葉だけじゃ伝わらないかもしれないが…心が語るままを全て唇に乗せてもう一度。

「愛してる。」

頬を赤くした恋人が俺の唇にその柔らかな唇を重ねて。

「俺も…愛してる。」

溢れだす愛しさに身体が熱を持ち始め…そしてまた欲しくなるのは仕方のない事だ。
勝手な言い訳をつける俺を見上げ、智の唇がゆっくりと動いて…。

「布団の中で…温めて?」

そう、告げた。
見つめ合い唇を重ねて…俺達はまたひとつになった。







‐END‐


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あきゅろす。
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