K I R I B A N
A
『これから帰る。』
聞き慣れた声なのに受話器を通すとかなり新鮮。
「うん…じゃご飯の支度するね。」
『ゆっくりでいいけど…風呂だけは沸かしといて。』
「え?うん…。」
『帰ったらすぐただいまのセックスだからな。』
耳元に吹き掛けられる…拓真のやらしい声に一層ドキドキする。
「バカ!」
『すぐ帰るよ。』
そして電話が切れた。
もう…
恥ずかしいじゃんか。
顔が熱いままお風呂の栓を抜き浴槽を洗ってお湯をはる。
キッチンで米をとぎ炊飯器のスイッチを入れた瞬間…玄関のチャイムが鳴った。
「お帰り。」
ドアを開けるとやんわり笑った拓真が立ってて。
「ただいま。」
伸ばされた両手で抱き締められ…キスされた。
舌を絡めながら部屋に入った拓真が後ろ手にドアを閉めて鍵をかける。
「…ッ…。」
早急な口付けに戸惑っていると…やっと唇が解放されて。
「…バカ…。」
顔も身体も熱くなってる俺を見つめて拓真がいやらしく笑い…下ろした指先で俺の前を撫で上げた。
「あ…ッ。」
それだけで…ゾクゾクする。
「言ったろ?ただいまのセックスするって。」
そう言って俺を抱き上げ…拓真が足早にベッドに向かった。
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