K I R I B A N
D
抱き合って…疲れて眠ってしまった智の身体に俺の昼寝用の毛布をかけてやる。
目を閉じた姿に、さっきまでの色っぽさはなく…むしろ無邪気にさえ見える。
このギャップを知るのは…俺だけ。
俯せで眠る頬にキスしてサラサラと流れる髪に指を滑らせた。
…俺と付き合う前まではそんなに目立たなかったが、一緒になって毎晩抱いて…どうもその色気が出ちまってるみたいで。
最近じゃ…他のヤツまで引き付けるフェロモンが出てるようだ。
「おかげでムシ共がウザウザ寄ってきやがる。」
柔らかい唇にキス。
…それも俺のせいか?
ドンドンドン!
不意に外から窓が叩かれ…何事かと思い、上半身裸のままカーテンを開く。
そこには必死の形相の柊がいた。
「ボス!大変ッス!ヒメが…」
「智なら中で寝てるが?」
「えっ!?」
窓の外から身を乗り入れて部屋の中で眠ってる智を確認すると、ホッとしたような…ガックリしたような?
…苦い顔をした。
「分かってても…ヘコみマス…。」
そう言って…すごすごと帰って行った。
つまり…俺とヤってた事を知って傷心?
…元々コイツは俺のだっての!
すると、畳の上の携帯が震えてメールが入る。
フラップを開くと良介からで…。
【早く久遠を返せ!】
コイツら…マジで勘違いしてねぇか?
俺は…天を仰いで溜め息を吐いた。
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