K I R I B A N
D
個室から出た時…俺はもうクタクタで、出し過ぎて声も涸れていた。
「こういう場所だと智は燃えるからな。」
ニヤッと笑う横顔が恨めしい。
自分だって…いつもよりやらしいセックスするくせに…と、思い出して顔が熱くなる。
トイレから出るとドアの外側に《清掃中》の札が掛けられてて。
「…これ?」
「当然だろ。」
ノブから外して用具入れに戻す。
…さすが用意周到だね。
呆れる俺に差し出された拓真の左手を…迷う事なく握った。
いつの間にか陽が落ち、辺りはスッカリ暗くなってて…ほんのり冷たい風が熱い身体に心地良い。
「お…ライトアップしてるぜ?」
来た道を戻ると桜並木をやんわりと照らすライトの数々。
淡いピンクの花弁も…ほのかに香る桜の香りも…すごく…いい。
「キレイだね…。」
「智の方がキレイだよ。」
サラッと言う拓真を見上げて…その言葉にドキドキする自分に呆れる。
「俺にはお前の方がキレイに見える。」
「…恥ずかしいから…もういい。」
繋いでた手が解けて俺の腰に回される。
「来年も…また一緒にこような?」
「うん…。」
来年もさ来年もずっと…拓真と二人こうして並んで見たい。
…そう強く願った。
暖かい胸に抱かれながら…夜空を彩る桜の姿をいつまでも見ていた。
‐END‐
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