K I R I B A N
E
良介の話によると。
彼…拓真さんは…とにかく手クセが悪いらしい。
付き合う相手に自分の携帯の番号を教えないみたいで…
宅電には毎日違う相手からの電話がかかりまくり…それを繋ぐのも断るのも良介の仕事になっているらしく。
「この前なんて…女の子に泣かれちゃってさ。」
溜め息を吐く。
…そうなんだ?
そんな風には見えないんだけどな。
いつも柔らかくて優しい顔しててさ。
「それ見てるから…なんて言うか…お前みたく真っ直ぐなヤツだと…アイツに遊ばれて…」
口ごもって俺を見上げ…困った顔をして。
「…でも好きなのか?」
黙って頷く。
「凄い…複雑だ。」
苦笑いをする良介をジッと見つめた。
拓真さんを初めて見た時…胸が熱くなったんだ。
忘れてた恋する気持ち?
傷付きたくなくて、もう恋なんてしないって決めたのに…一目ボレしちゃったんだ。
素直に…
あの人に抱かれたいと…そう思った。
「セッティング…してやるよ。」
「…いいのか?」
「気は進まないけどな。」
良介は…拓真さんの事を信用してないみたいで。
それに俺を大事に思ってくれてるからこそ、橋渡しにはスゴく消極的だった。
俺が告白を決めたあの日までは。
[*←前n][次n→#]
[戻る]
無料HPエムペ!