K I R I B A N
B
智にじゃれ付く犬を見ながら…チッと舌打ち。
…俺は…犬にまで嫉妬してんのか?
そんな自分に苦笑い。
楽しそうにはしゃぐ智はいつもの柔らかい顔でも俺に抱かれてる時のエロい顔でもない。
きっとあれが…十六歳の素の顔なんだな。
なんて…感傷的になる。
すると…。
「犬、好きなの?」
どうやら飼い主らしい奴がゆっくりと智に近付いて行く。
「あ…はい。」
やんわりと笑う智を見ながら俺はデカい溜め息を吐く。
…ったく。
そうやって笑うなっつってんのにアイツめ。
早速、勘違いした飼い主のヤローが気安く智の肩に触りやがり…。
「キミ…一人なの?」
「俺のもんに気安く触んな。」
智に触れてるソイツの腕を掴み力を込める。
「イテテッ!」
「た…拓真!?」
慌てる声に…渋々ソイツの腕を解放して。
「俺の連れに何か用?」
「い…イエ…ウチの犬と遊んでくれてアリガトウゴザイマシタ!」
ペコリと頭を下げ犬共々猛ダッシュで逃げて行った。
「拓真!」
頬を赤くした智が何か言いたげな顔して俺を見上げる。
「…行くぞ。」
その手を掴んで砂浜を歩き出した。
「…ありがと。」
お前の笑顔は可愛いんだから笑うなっつの。
全く。
…無自覚だからマジ困る。
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