K I R I B A N
A
車窓を流れるのは青々とした空とキラキラ光る水の煌めき。
助手席に座る智が運転席側に広がる海を見ながら嬉しそうに目を細めた。
久々にかけてるFMからはこんな天気にピッタリな曲が流れていて…嫌でもテンションが上がる。
「ね、どこに行くの?」
「取りあえず…下りてみるか?」
そのまま駐車場に車を停めて砂浜に続く階段を手を繋いで下りてく。
砂を踏みしめる感覚に…苦笑い。
靴が…砂だらけになるな…。
ふぅ…と、溜め息。
チラと横を見れば満面の笑みを浮かべる智の顔。
…ま、いいか。
砂は後で払えばいい。
それよか…智の笑顔の方が価値がある。
「わぁ…キレイ。」
穏やかな波が打ち寄せ…海面に反射する光が智を照らす。
それを見つめ近くに転がる流木に腰を下ろした。
潮風が智の髪を揺らしサラサラと流れる。
…キレイだ。
ワン!ワン!
何処からともなく…犬の鳴き声がしてそちらに目を向けると、真っ白なラブラドールが智に向かって走って来て…反射的に立ち上がった。
「可愛い!」
ソイツは…自分を撫でてくれる目の前の人間を気に入ったようで。
何度も頭をすり寄せては智を見上げて…。
その姿が…何故か芹沢とダブった。
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