K I R I B A N
O ―芹沢SIDE―

駅ビルを出た俺達はすし詰めの満員電車に揺られて帰る途中で…。

「ちょっ…ゆう…痛い!」

「もう少し…我慢して?」

聞きようによってはエッチに聞こえる会話だけど…普通に満員電車の中です、一応。

「だーめよ、柊クン?痴漢プレイとかしちゃ。」

「誰がするかッ!」

ニヤニヤしてる佐古を赤い顔して睨み付けながら柊が腕を伸ばす。
…けど。

「痛いってば!ゆう!」

「あ、ゴメン弘樹!」

隣りの春日部の頭にそのヒジがぶつかりこの一角はプチパニックを起こしてた。

窮屈過ぎて身動きが取れなくなってる俺達は…ちょっぴりストレスを感じながらも持ち前のチームワークで何とか頑張ってる。

すると…
俺の身体に後ろから腕が回されやんわりと抱き締められた。
腕の主は間違いなく俺の大事な人。
見上げてみれば大正解!
やっぱり大葉だった。

「芹…平気?」

「うん。柊に寄っ掛かってるから平気だよ?」

そう言った途端、優しく笑ってた顔から笑みが消えて…ちょっと低い声になって。

「どうせなら俺に寄り掛かってくれ。」

そう言ってギュッ…って抱き締められた。

「大葉…怒ったの?」

いつもと違う大葉の態度に急に不安になってそう聞く。

「いや。怒ってないよ。」

黙っちゃった大葉の腕に両手をかけてジッと見つめる。
怒ってなかったら…なんでなのかな?
…って思って、あっ!

「もしかして大葉、ヤキモチ妬いてるの?」

すると大葉は顔を真っ赤にして口を"ヘの字"にしながら…。

「…そうだよ。」

聞こえるか聞こえないか…ってくらいの声で呟いた。
ちょっと…大葉ったら!

「嬉しい!」

「…は?」

「だってヤキモチ妬いてくれたんでしょ?それって俺が好きって事でしょ!?すンごい嬉しい!」

顔をガン見しながらそう言ってるのに…!

「ちょっ…芹、もう少しトーンを下げてくれ。さすがに照れる。」

益々真っ赤になった大葉がそう言うと同時に回りからクスクスって笑い声が聞こえて…あれ?もしかして声、デカ過ぎ?

「安心しろ弟。天と地がひっくり返っても俺が芹を抱くなんて有り得ないから。」

「芹には色気を感じねぇからな…どっちかってーと食い気だろ。」

ククッ…って笑いながら柊と佐古が首だけ俺達の方を向いてニヤニヤ。

「芹の良さが分かるのは俺だけでいいんだよ。」

そう言った大葉に胸がキュンってして…包まれた腕の中で背伸びして、大好きな恋人の唇に…キスをした。


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あきゅろす。
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