K I R I B A N
N ―楓SIDE―

楽しい時間がアッと言う間に過ぎ…フロントからの電話を切った春日部が振り返って。

「あと十分だってさ!」

そう言って手に持ってたアイスミルクティーを飲み干した。

「俺、ボウリングで騒ぎ過ぎて声ガラガラっスよ!」

そう言った柊が隣りに座るニイサンにマイクを渡す。

「…なんのマネだ。」

そのニイサンが柊をギロッと睨んでマイクを投げ返した。
睨まれ、マイクをぶつけられた本人はまるで子供みたいに屈託なく笑ってニイサンにマイクを差し出して…。

「シメは譲りますよ!」

「あ"ぁ?」

ニヤ付く柊を睨んだままニイサンが目を細めた。
そして…。

「良介。」

「ん?」

「『RUN』、かけてくれ。」

リモコン片手に大葉と佐古が曲を探して送信…と、すぐにイントロが流れ出した。

この曲は僕も好き。
男同士の友情…熱くて、深くて大好きなんだ。
それをあのニイサンが選曲しただなんてちょっと意外。

すると、持ってたマイクを柊に放りニイサンが口の端を上げて笑って。

「俺、この歌が一番好きなんだ。ヘタクソに歌いやがったら…ブッ飛ばす。」

キョトンとしてた柊が少し笑って歌い出した。

歌詞をなぞりながら僕はふと気付く。
この歌は…まるで僕らみたいだなって。
何するにも一緒、でも馴れ合いじゃなくて…もっと深いトコで繋がってるような家族みたいな僕ら。
きっとニイサンはこんな風に僕らの事を思ってくれてる…なんの根拠もないけどそんな風に思えたんだ。

僕らは仲間で…これからもずうっと仲間。

そんなメッセージが込められてるみたいで…好きだったこの歌が、もっともっと大好きになった。


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あきゅろす。
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