K I R I B A N
M ―弘樹SIDE―
人数が人数だけに…僕らはここのカラオケボックスの中でも一番大きな部屋に通された。
「うっわー!広いね!」
「ホント…寮の部屋三つは入るんじゃない?」
芹と西野が曲名リストをあさりながらテンションを上げる。
僕はと言えば…ボウリングの正念場で見事なガーターを繰り出した恋人の横に座って。
「いつまでもクヨクヨすんなって!」
「クヨクヨなんてしてないよ。」
そんなイジケ虫の背中をバンッ!と叩いて。
「あれはあれで…見事なガーターだったし。」
うんうんと頷く僕の横で…ゆうが一層暗さを増した。
「春日部…傷口に塩、塗ってるぞ?」
佐古の声に振り返って。
「そう?」
「…お前って柊が相手だと結構キビシイのな?」
そうかな…?
腕組みしてウーン…と唸ってみる。
自分の事だから良く分かんないけど…ゆうが僕にとって特別だって事に変わりはないんだよね?
「ま、それがお前らの愛のカタチなんだろうから別にいいけど?」
意味深な笑いを浮かべる佐古を見つめて妙に恥ずかしくなる。
アイツ、僕がゆうを慰めるように誘導していてるんだもんな…もちろん僕にもそれが分かるようにね。
全く…佐古も久遠も僕を誘導するのがホントに上手い。
僕はそれだけ単純なんだろうか?
「ゆう…?」
部屋の隅っこで小さくなってる大男をギュッと抱き締め…唇にキスする。
「元気出せ!…ね?」
どよん、としてるゆうの目に光が戻ってきて…。
「も一回してくれたら…元気になるよ?」
そしてギラギラとし始める。
…コイツは僕以上に単純だから。
「ハイハイ。部屋に帰ったらサービスもしてやるから…いつまでもイジケてんなよ?」
そう言ってキスをして、唇を離した時にはすでに…ゆうはいつものゆうに戻っていた。
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