K I R I B A N
L ―拓真SIDE―

…しかし…マズい展開だな。

十フレームを終えた今、辛うじて勝っているものの…レーンでピンを睨みつけてる柊のこのラスト一投で勝敗が決まる。

ここでヤツがストライクを出せば…俺達の負けになる。
金を払うのはどうでもいい…むしろ自分で出すつもりだしな。
それよりも…俺に気持ち良く金を払わせたいなら柊、外せ。

すると…目の前で構えているヤツがくるりと振り返り。

「…なんか…視線が痛いんスけど?」

…苦笑い。

「気付いたか?」

「…外せオーラがグサグサきてます。」

柊の発言に皆がドッと笑い出した。
…っとにおもしれぇヤツだ。
柊のこういう所は結構気に入っている。

「オマエ、ここで外すとかなりオイシイぞ?」

腕を組み足を組み替えてニヤッと笑う俺をジッと見つめて心揺れる柊がムチャクチャ笑える。

「バカゆう!…ニイサンの作戦に乗ってどぅすんの!」

「そうだ柊!俺達はお前にオイシさなんて求めてねぇぞ!」

ヘタレ柊に熱い声援?を送る春日部と佐古にもかなり笑える…つか、ホントにコイツらおもしれぇよな。
智とはまた違った意味の愛しさをコイツら皆に感じる。

「よっし!任せろ…俺も男だっ!」

気合い十分でレーンに向かって走り出すヤツの背中を見ながら。

「…肩に力入っちまってんな。」

「…え?」

ボソリと呟く俺の声に智が反応すると同時に…。



ゴトン!



ゴロゴロゴロ…



ガタン。


ピンを丸々残したまま…柊の放ったボールが右脇の溝の奥深くへと消えて行った。


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あきゅろす。
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