K I R I B A N
A
「…ん…ど…した?」
見つめていた拓真のまぶたが開き眠そうにそう言うと…俺の顔を見るなりギョッとした顔をした。
「なに…怖い夢でもみたのか?」
え…って思った瞬間、伸ばされた拓真の腕に引き寄せられ胸に収まる。
「…拓真…?」
凄い鼻声。
その時俺は…初めて自分が泣いている事に気付く。
「大丈夫だよ。側にいるから。」
暖かい胸に顔を埋め背中をさすってくれてる手の平にも涙腺が緩み…恥ずかしいくらいに俺は…大粒の涙を流した。
自分でも…なんで泣いてるのか全く分かんなかったけど、抱いてくれてる拓真が暖かくて安心してしまったのは確か。
声を殺して泣き続けてる間も休む事なく拓真の右手は俺の背中をさすり続けていた。
「た…く…。」
どのくらい経ったのか…だいぶ落ち着いてきた俺は、寄せていた胸から顔を離し拓真を見上げる。
「…ん?」
「好き…だよ。」
そう言った唇に拓真の唇が重なり…離れて。
「俺も…好きだよ。」
優しい顔が俺を見下ろし…胸が高鳴る。
拓真への愛しい気持ちが溢れてきて…また涙に変わった。
「…智…?」
「ご…めん…なんか俺…ヘンだ。」
頬を手の平で包まれ口付けられ…俺は止まらない涙に戸惑った。
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