K I R I B A N
C ―良介SIDE―

駅前でバッタリ出くわした我が兄貴と久遠とともに、丁度到着した電車に飛び乗った。

「今日は電車で移動なんスか?」

車内を歩きながら柊がそう聞き、拓真は口の端を上げて久遠を見ながら。

「あぁ。たまには電車でイチャつきてぇ…って俺のカワイコチャンが言うもんでな。」

「な…っ!違う…っ…!」

顔を真っ赤にした久遠が座席から立ち上がり、それを楽しげに見ていた拓真がやんわりと抱き締めて…。

「違うってのかよ?」

そう言われ二の句が継げなくなったらしい久遠が更に頬を赤くし困った表情をした。

すると…。

「あれもしかしてホモ?」
「ばか…声デカいって。」

入口ドア付近にいた学生風なヤツラが俺達を見てニヤけ笑いをしていた。

…そんな態度を目の当たりにしたウチの仲間内が黙っているハズもなく。

「んだコラ、ケンカ売ってんのか!?」
「ホモで悪いのかよ!」

悪人面に変わった柊と鋭さが増した佐古がヤツラに向かい啖呵を切った。

こんなトコで乱闘なんてゴメンだ…と思い、止めるべく足を踏み出したのと同時に…
俺達の前を横切り拓真がソイツらに向かって歩いて行き…その後頭部を両手で鷲掴みして向かい合わせに押し付けた。

…つまり。

ヤツラは今、拓真の両手での拘束により無理矢理キスをさせられている…訳だ。

「―!?」

当人達は当然だが…回りにいる俺達も呆然としてしまい…誰も動けずにいて。

「これでお前らもホモだな?」

ニヤリと笑った拓真が両手を外してこちらに戻ってきた。
ヤツラは…
次の駅でドアが開くと同時に逃げるように外へと飛び出して行った。

「…殴られた方がまだマシだったかもな?」

苦笑いとともに吐きだした柊の声に…みんなも苦笑いをした。


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あきゅろす。
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