K I R I B A N
D
温かいファミレスを出ると…吹き付ける外の風は冷たかった。
見上げた信号が歪んで見えて…。
「……っ…。」
俯いた弾みでボロボロと大粒の涙が零れ落ちてアスファルトにいくつも染みをつくってく。
色んな思いが混ざってて…だけど漠然と心が重かった。
僕の…
僕らの関係はあんな風に思われてるんだ…なんて現実をみた気がした。
僕らがどんなに真剣に愛し合っててもそれはおおよそ他人には理解されないんだ、と分かったら酷く胸が痛んだ。
「…佐古…。」
歩行者用の信号が青に変わり歩き出した腕を掴まれ…驚いて振り返る。
「…あ…」
そこには怒った顔の佐古が立ってて…。
「…楓チャン!」
その後ろには隼人クンの姿があった。
「隼人から聞いた。」
「……ぅん。」
掴まれた腕がジンと熱くなる。
「他人の言う事なんて気にすんなよ。」
「だって…」
「"だって"じゃねぇよ。」
唇をキュッと噛み締めて俯くと…掴まれてた腕を引かれ佐古の胸に抱き入れられた。
「ちょっ…離し…て!」
駅前の交差点。
人通りも車通りも多いししかもそうでなくても佐古はカッコいいからムチャクチャ目立つ…なのに!
「誰が見ててもイイんだよ!」
頭上からの怒ったような声に身体が震える。
「お前が男なんて分かってるっつの。」
「…佐古…。」
「男だから好きになった訳じゃねぇ…お前だから好きになったんだ。分かんだろ?」
強く…抱き締められる。
頬を寄せた佐古の胸から少し速い心音が伝わってきて…ドキドキする僕のと重なった。
「他人の言う事なんて気にすんな。お前は俺の事だけ考えてりゃいい。」
佐古は…
いつもこうして不安な僕を抱き締めてくれる。
僕は…
甘えちゃいけないって思ってても…そんな佐古にいつも甘えちゃうんだ。
「分かったか?」
見上げた佐古は優しい顔でやんわりと笑ってくれて…僕は…涙でグチャグチャな顔を佐古の胸にすり寄せ何度も何度も頷いた。
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