K I R I B A N
C
行き先も決まらないまま時間だけが過ぎ…焦れた佐古がトイレに行ってしまうとすぐ、真奈サンが僕に鋭い視線を向けてきた。
「西野さん、でしたよね?」
「は、はい…。」
今までにこんな目で見られた事、ない。
"疎ましい"という思いがありありと分かるような…そんな鋭い視線が僕に突き刺さる。
「あなた男の子なんでしょ?なんで雅史くんと付き合ってるの?」
敵意丸出しな言葉に返答できない僕をバカにしたように鼻で笑った。
「まさか…彼が本気であなたの相手をしてるとか思ってないわよね?」
「真奈…!何言って…!」
少し怒ったような隼人クンを見もしないで。
「ちょっと遊んでるだけよ。雅史くん、モテるんだもの今に捨てられるわよ?」
クスクスって笑った彼女が一層冷ややかな視線で僕を見て…。
「可哀想…。」
そう言って…笑った。
僕は…
返事も相槌も反論さえできなくて…ただ、胸が痛くて悲しくて…。
「隼人クン…ごめ…僕、帰る…。」
沈んでたソファから立ち上がると彼女と目が合ってしまった。
最初はあんなにキレイだと思っていた顔は嫉妬で歪んでいて。
「アンタなんかに…雅史くんは似合わないわ。」
唇をキュッと噛み締め…僕はその場から逃げ出した。
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