K I R I B A N
A
手を繋いだまま寮を出てなだらかな坂を下りながらもやっぱり気は重くて…。
激しく人見知りな僕は、今すぐにでも逃げ出したい気持ちで一杯だった。

「今日会う人は…どんな人なの?」

隣りを歩く佐古を見上げて逃げ腰の気持ちを落ち着かせようと…基礎知識程度に情報を求めた。

「んー…金持ちで高飛車で…イヤな女。」

…は?
あれ…このコメントは?

「佐古の友達じゃ…ないの?」
「あり得ない。」

あまりの即答に僕の方が続く言葉をなくす。
戸惑ってジッと見つめると僕の恋人は眉を寄せて露骨にイヤな顔をしてみせた。

「今日会うのは隼人のオンナだよ。」

「え…彼女さん!?」

男である僕と付き合ってる佐古の親友だからってコッチ方面の人な訳ないけど…なんとなく驚いてしまう。

「昔っからアイツは趣味が悪いんだよ…なんつーかさ…」

眉間にシワを寄せて話す佐古がとってもレアで…いつものクールな物言いのカケラもない、初めて見るくらいの素の部分を見た気がした。

「チョロっと顔出しゃあ十分だろ?その後は俺達だけで遊びに行こうぜ?」

いつもの顔に戻った佐古が僕の極近くにまでそのキレイな顔を寄せて…。

「佐古…顔、ちか…」

続く言葉が佐古の唇に吸い込まれていった。


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あきゅろす。
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