K I R I B A N
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「これは………こう?」
「違う。これはこっちだよ。」
「え…っと……んー…。」
広げたテキストの上で頭を抱えた楓が低く唸ってシャーペンを置き…その姿を横目でみながら俺は人知れず溜め息を吐いた。
「もう…なにがなんだか…。」
二の句を告げないのか、更にグッタリと机に崩れ落ちる。
二年のクラス編成が成績順と知ってから、俺の可愛い彼チャンはひたすら勉強に励んでいる。
そりゃもう…前とは比べ物にならないくらい一生懸命に。
…その頑張りは分かるんだけど、もう一息なんだよな?
目の前でウンウン唸ってる髪を撫でてやりながら…どうすれば楓が分かるかを色々と考えてみる。
「佐古センセー…」
可愛い楓が少しだけ顔を上げて上目遣いで俺を見つめた。
「なんだよ楓クン?」
変なプレイじゃねぇが…勉強が絡むとなぜか楓は俺を先生扱いする。
「ちょっと…休憩したいな?」
力なく笑う顔が可愛いから仕方ねぇ。
壁に添えられてる古ぼけた柱時計を見上げて…腕時計を見下ろして。
「じゃあ十五分休憩な?出歩いてもいいけどちゃんと戻ってこいよ?」
信じてるけど一応言っとかないとな?
そんな心も知らず俺の可愛い楓クンは、心底ホッとした表情をしてから満面の笑みを浮かべた。
…普通に傷付くっつの。
「リフレッシュしてきます!」
勢い良く立ち上がったヤツが俺を振り返りもせず、まるで逃げるように走り去って行った。
俺は…飛び出していったヤツが散らかしてったテキストの山を無言で直しながら大きく溜め息を吐いた。
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