K I R I B A N
告白 〜拓真x智之
「そーいや、ボスとヒメの馴れ初めってどんななんスか?」

カップル同士それぞれでイチャイチャしている時…不意に柊がそんな事を言い出した。

「そう言えば!」

「僕らのは結構知られてるけどニイサン達のって聞いた事ないかも!」

柊の尻馬に乗った西野と春日部までもがそう言い、おぼろげながらに知っている良介と芹沢は苦笑いをしながら俺達を見ている。

「俺も興味あるかも。」

このテの話題には興味なさげの佐古までそう言い出し…隣りに座る拓真に視線を向けた。

「別に大した話じゃねぇよ。智が告ってきたから…ホテルに連れ込んで愛の無いセックスしただけだ。」

途端…
シーンとする室内。

あぁ…もう!
ストレート過ぎるよ!

はぁ、と溜め息を吐いて拓真を軽く睨む。
なのにそんな俺を抱き寄せて唇にキスしてきた!

「ばっ…たくっ!」

「今更照れんなよ。」

ニヤニヤする拓真を見上げ唇を尖らせ…てると。

「信じらんねー!」

「…僕らのよりイタくない?」

唸った柊と呆れたような春日部が苦笑いして…佐古は額を人差し指で押さえて、西野は口を開けたまま固まっていた。

「…そんな事してたのか拓真!?」

「最初なんてそんなもんだろ?」

ムッとしてる良介を見もせずコーヒーを飲み、俺の髪をそっと撫でて…。

「最初なんてより今の方が大事だろ?」

やんわりと笑う拓真を見上げて…俺も頬が緩んでしまう。

「あのセックスがなきゃ俺達は一緒になれなかったもんな?」

もう一度、キス。

…そう。
とても複雑だけどそれは当たり。
あの日拓真に抱かれていなければ…きっと今のこの生活はないと思う。

あの日のセックスは…俺の少ない経験の中でも一番最悪な行為だった。
でも…そんな事を思い出さなくなる程に、今は毎日が最高に幸せだから。

「今は愛のあるセックスしかしてないもんね?」

…なんて言ってから慌てて口を塞いだ。
俺…また変な事を口走った気がする。

隣りにいる拓真が顔をニヤつかせて俺の唇を舌で舐めあげて。

「そうそう。愛のないセックスはもう二度と出来ねぇよな?」

ククッ…とノドで笑う拓真を見上げて顔が熱くなる。

「なんか…スゲー微妙。」

「…ラブラブカップルの知らざれる真実を知った感じ。」

柊と春日部が苦笑いして…みんなもやっぱりそうで。

「智…愛してるよ。」

いつもと同じくそう言われて…反射的に。

「俺も…たく…。」

そう答えてしまった。

「はいはい、ごちそーさま!」

呆れ顔の春日部が笑い、みんなもつられて笑い出した。
もちろん…俺も拓真も。

俺達の馴れ初めを告白するハメになるとは思わなかったけど…みんなそれぞれ、色んな事があったから今があるんだよね?

みんなの楽しそうな顔を見ながら…俺も幸せな気分になった。

―END―


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