K I R I B A N
A
『学校一、強くて硬派な男』
だったハズの僕の恋人が…男に告られて尚かつ、『ありがとう』とか言っちゃってさ?
「…どぉなの、それ?」
立ててる膝を抱き締めて小さく唸る。
見知らぬ誰かが僕の恋人に告白してるのなんて…そんなのをただ黙って聞いてられるかっての!
…でも…
その場に飛び出して行く事が出来なかった僕は…二人に気付かれないよう静かにまた階段を上がり、屋上にやってきたって訳で。
「…さむっ…。」
なるべく風が当たらないよう階段横の壁にくっついても…冬の冷たい空気は容赦なんてない。
寒さに震える身体をギュッと抱き締める。
「…バカ。」
なんで…あんなに優しくフるのさ?
ゴメンナサイするならそれっきりなんだし…そんな…。
じわっ…と視界が滲む。
僕以外のヤツに優しい声をかけてる祐一郎が…堪らなくイヤだ。
これがワガママだって事は良く分かってるけど…なんか悔しくて。
「バカゆう…。」
「バカってなに?」
頭上からの聞き慣れた声にギョッとして顔を上げれば…ムッとした表情の僕のカレシがすぐ横に立ってて…
僕は慌てて潤んでた目元を拭った。
「いつまでも帰って来ないからスッゲ探したんだぞ…って弘樹…どした?泣いてんのか!?」
「…泣いてない。」
ソッポ向く僕の隣りに腰を下ろして顔を覗き込んできて。
「なんだよ!誰かにイジメられたのか!?」
「…なんでもないよ。」
「なんでもなくナイだろ!ひろっ!」
腕を掴まれて正面を向かせられて…目が合った瞬間、不覚にも涙が零れてしまった。
「弘…」
「お前が…っ!」
「なに…俺…?」
「…なんでっ、ゴメンナサイするヤツに…『ありがとう』なんて…」
口にする度涙が溢れてどうしようもなくて…。
「…聞いてたのか?」
そのまま…胸に抱き寄せられて背中を優しく撫でられる。
「…僕以外のヤツに…優しくなんて…しないでよ…。」
バカみたいな…ヤキモチ全開の情けない本音が零れ落ちてしまった。
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