K I R I B A N
A
シュンシュンと沸く湯がフタを揺らし、その金属音が部屋に響く。
俺の前に座ってる芹公が窓の外を見つめてまたひとつ溜め息を吐いた。
「…ウゼーな。」
俺の顔をチラ見したヤツが視線を天井に向けて一段とデカい溜め息を吐く。
「会議終わったらずっと一緒に居れんだから、ちょっとくらい我慢しろっての!」
テーブルにヒジ付いて掌にアゴを乗せる。
見つめる先の芹公も俺と同じポーズをとって。
「柊って意外とドライなんだね?」
「そうか?」
表面上は平気な顔してても…俺だって一刻も早く可愛い弘樹に会いたいさ。
でもジタバタしても仕方ないしな。
「はぁ…。」
思いがけず…俺まで溜め息。
「あー、真似した!」
「真似じゃねーよ!」
この俺を指差した芹公が楽しげに笑い、悔しいけど俺もなんだか笑えてきた。
「俺ね、大葉が大好きなんだよね!」
唐突にそんな事を言い出した芹が頬を赤くするけど…。
「んなの分かってるよ。」
なにを今更…と思いながら立ち上がる。
「えぇっ!?なんで分かるの!?」
素でビックリしてる芹公を見て…俺の方がビックリだ。
「分かるもなにも…誰の目から見ても明らかだろうが。」
つか…
芹公の『大葉大好き』が分かんねぇヤツの方がヤバいだろう?
ホント…芹公のこーゆーところが分からん。
ガス台に向かい火を止めて…ポットに湯を移してる俺の背中に向かって。
「柊の『春日部大好き』も分かり易いけどね?」
楽しそうな芹公の声が聞こえて苦笑いをした。
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