K I R I B A N
C
セクハラまがいな野郎が立ち去ったのを確認して『ジーマニ』に戻ると…ジーンズを持った智がキョロキョロしながら近付いてきて。

「拓真!さっき居たお客さん知らない?」

そう言って首を傾げる。

…全く。
あのヤローはお前がジーンズ探してる隙にケツ触ろうとしてたんだぞ?
マジ、無自覚過ぎるぜ…智チャン?

溜め息をひとつ吐いて。

「…知らねぇ。」

「そう…どこ行っちゃったんだろ?」

困った顔した智の横をすり抜け、さっきまで座ってた椅子にドッカリと腰を下ろした。
そんな俺をチラと見て…奏多が口の端を上げる。

「…んだよ。」

「あのお客さん、いつも結構な金額使ってくれてたんだよね?」

「…ふーん。」

「残念だなぁー。」

ニヤニヤしながら売り場に戻る奏多を横目で見送り…パソを開き仕事の続きを始める。

奏多のヤロー、伊達に付き合い長くねぇな。
俺の行動、読んでやがったか?

苦笑い。

しかし…。
智のヤツには、早いとこココでのバイトを辞めてもらいたいもんだ。

…ったく。
なにが看板ムスメだ。

俺以外のヤツに触らせる為にバイトさしてんじゃねぇぞ?

イライラが募る。

ふと顔を上げれば…その先には接客中の智の可愛い笑顔がある。

俺以外のヤツに…
営業用だろうが何だろうが笑いかけるな。
お前は…俺だけの為に笑ってればいい。

胸の中にドス黒い嫉妬の炎がくすぶり出した。


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