K I R I B A N
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支度もそこそこにタクシーに押し込まれ、到着したのは懐かしい剣右さんの実家。

由緒正しい多田の本家で俺達の遊び場だった場所だ。

「ホラ、早く!」

感慨にふける間もなく弘樹に急かされ敷地裏にある神社へと走った。

多田家はここらの地主で何代目か知んないけど一応神社の神主を受け継いでいる。

「剣右さんも…神主になんのかな?」

走りながら隣りの弘樹にそう言うと。

「…剣にいが神主…?」

…二人で顔を見合わせて笑った。
随分と悪そうな神主になりそうだから。


本堂側の詰め所にたどり着き今の神主…剣右さんのお父さんにお茶を出してもらって喉を潤した。

「わざわざ悪かったな…祐ちゃんまで巻き込んで。」

「いや…俺、ただの付き添いなんで。」

久々の世間話。

巫女さんは処女でなけれはならない、と言う古いしきたりがあるにも拘わらず…ここ専属の巫女さんが妊娠五ヵ月で今朝姿を現し…。

そんなで…どうしようもなくて、舞いの出来る可愛い弘樹にその役割が回ってきたらしい。

「叔父さん…今日は神前の挙式なんだよね?」

着替えを終えてカーテンの奥から出てきたのは…

黒髪のつけ毛と薄化粧をして…白の合わせと赤い袴が良く似合う…まるで少女のような弘樹だった。

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