K I R I B A N
A
「もう!帰れ帰れ!営業妨害もいいとこだよ!」
椅子に座る俺の目の前で仁王立ちしてる奏多が顔を真っ赤にして怒りまくってる。
「イイじゃねぇか…幸いヤツラはソッチ系擁護派だったんだし。」
口の端を上げて笑う俺にあからさまに嫌な顔をして。
「あのなぁ!智ちゃんはココの看板ムスメなんだぞ!なのにホモってバレて居づらくなったらどうすんだっての!」
「奏多さん…声、大きい…」
ヒートアップする奏多をたしなめながら、頬を少し赤くした智がチラと俺に視線を向けた。
「ホラ!智ちゃんも言ってやんな!」
「…いえ…俺は、嬉しいです。」
更に頬を赤くし照れたように笑う智を見つめて奏多が。
「…バカップル。」
ひとつ溜め息を吐いた。
ニヤニヤと笑いながら、目の前に立つ智の左手を握る。
「お前のカレシって…どんなヤツだよ?」
指先に触れ冷たい掌を握り細い薬指にハメられてる少しゴツめの指輪を弄る。
コレをハメるってのが、ココでバイトするために俺が出した条件。
智には誰も触れさせない…っていう俺のエゴ。
「俺のカレは…」
赤い顔を俯かせ上目使いで俺を見ながら。
「ヤキモチ焼きで、キレイでカッコ良くて…心から愛してる人、だよ。」
ラストは蕩ける程の可愛い笑顔。
こんな顔見たら…ヤりたくなるに決まってんだろうが。
抱き締めたくて、繋いだ手をギュッと握って細い身体を引き寄せた。
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