K I R I B A N
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「いらっしゃいませ!」
聞き慣れた声に顔を上げれば、陳列棚のシャツをたたんでいる智の姿が目に入る。
なんも代わり映えもしないこの『ジーマニ』が、いつもより華やいで見えるのは愛しい智がいるからか?
華奢な身体を見つめフッと笑みがこぼれる。
「たぁくま!智ちゃんに見とれてないでサッサと仕事しろよ!」
可愛い恋人に見入っていた俺の目の前にデカい段ボールを抱えた奏多が現れた。
「ちょっとくらい休ませろよな。朝からパソいじってっから目、痛ぇんだよ。」
かけてた眼鏡を棚に置き大きく伸びをした。
「ヤってばっかいるから締め切り忘れるんだろ!自業自得だよ!」
奏多は笑いながらパーカーのポケットから出した缶コーヒーを俺に放る。
「智が色っぽいんだからしょーがねぇだろ?」
受け取ってプルタブを起こし一口飲む。
「マズい。」
「贅沢言うな!」
即座に入るヤツのツッコミに苦笑いしながら愛しい恋人の姿を探した。
すると…
「おにいさんって彼女とかいるんですかぁ?」
智の隣りには…やたらと短いスカート姿の女子高生らしきヤツラ。
「え?あぁ…」
戸惑いながらも、左手の薬指にはめてる俺がやった指輪を見せて。
「います。」
そう言って…やんわりと笑った。
「えー!ショックぅ!」
それでも離れようとしないギャルどもに痺れを切らし、椅子から立ち上がった俺はそのまま智に近付き左手を握って。
「悪いな。コイツは俺のだから。」
そう、言い放った。
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