K I R I B A N
D
良介との電話を切り色々と作戦を練りながら部屋に戻った。
「お帰りなさいっ!」
笑顔で俺を迎える芹を見て自然とため息が出る。
…なんで…
スウェット着てんだ?
呆然とする俺に背中を向けた芹沢がベッド際へと歩いていく。
「このベッドで三人寝るのはキツいよね?」
「お客さん用の布団があるからそれを敷こう?」
「あ、じゃ手伝うよ!」
二人揃って、荷物置き場化してる元の寝室に入っていき…一式セットを持って戻ってきた。
それをベッドの側に敷きながら芹沢が満面の笑みを浮かべて。
「俺、誰かと寝るのって二度目なんだ!」
「なんだそれ?」
やんわり笑った智がそう突っ込み、芹はエヘヘッ…と笑って。
「ちっちゃい頃からずっと一人だったから誰かと一緒に…って記憶がないんだよね?」
楽しそうにシーツを伸ばす芹沢を見ながら智が緩く笑って…俺はただ、そんな二人を遠くから見ていた。
「一緒に寝たの、大葉が初めてだったんだ!そんで次が今日!」
帰れと言われても引き下がらなかった訳が分かった。
もしかして良介もそれを分かってたから迎えに来なかったのか?
そう思ったら…なんとなく納得した。
「芹。」
「はい?」
「二か月に一回くらいなら泊まってもいいぞ。」
芹の大きな瞳がパチッと開かれ瞬きを何度か繰り返して。
「ほ、ホントにっ!?」
「但し、前もって言え。」
コクコクと何度も頷き、頬を真っ赤にして嬉しそうに笑う。
「良かったな、芹沢?」
「うんっ!!」
ニコニコしてる芹沢を優しいまなざしで見ていた智が、俺に視線を向けてやんわりと笑った。
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