K I R I B A N
A
…不本意だ。

全く…不本意きわまりねぇ。

溜め息をひとつ吐いて、ジュージューいってるフライパンからフタを取り火から外した。

「うわぁ…美味しそう!」

立ち上ぼる湯気の向こうには満面の笑みを見せる芹沢。

「美味そう、じゃねぇ。美味いんだ。」

そう言いきりハンバーグを取り出して並べられた皿に盛り付けをする。

「すごい…キレイ!」

ソースを絡めるようにと敷かれたパスタの横に添えられているのはポテトサラダ。

「芹はお子様だからな…目玉焼き付けてやる。」

ポテトサラダ増量の皿に置かれたハンバーグの上に半熟の目玉焼きを乗せてやった。

「わーい!やったぁ!」

嬉しそうに笑う芹の向こうには、もっと嬉しそうに笑う智がいる。

「智、目玉焼きは?」

「ん…俺はいいよ?ありがと拓真。」

作っといた目玉焼きを芹沢の皿に追加した。

「うわわっ!いいんですか?」

目をキラキラさせた芹が早く食わせろと言わんばかりにテーブルに皿を並べていく。

「ここが久遠で、隣りが俺ね!ニイサンは前!」

このヤロー…智の隣りは俺だろうが。

「食べよう!」

「お前が仕切んなっつーの。」

クスクス笑う智が芹の隣りに座り、晩飯が始まった。

楽しそうに笑いながら飯を食う芹沢。
そんなヤツを見つめて微笑む智は…キレイで可愛い。
俺の前では滅多に見せない等身大の智がそこにいて…。

物凄く、新鮮だった。

「久遠ったら凄いんですよー?」
「も…言うなってば!」
「えーどうしよっかな?」

ぶっちゃけ。
智しか見えねぇ。

ムチャクチャ笑ってる顔も何もかもが、可愛い。
俺は…いつもよりすげぇ可愛い智にいつの間にか魅入ってしまっていた。


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