K I R I B A N
I ―佐古SIDE―
…マジかよ…?

俺さまと作戦練ろうと思ってたのに…つか、アノヒト全然やる気なかったっぽいよな?

溜め息を吐き、横にいる楓を見下ろしてから隣りの植え込みの影にいる弟を見た。

ちょっと移動すりゃ…あっちに渡れるか?
腰を浮かして楓の手を握り中腰で移動を始める。

「見ーっけた!」

途端に柊の声がして焦って顔を上げた…けど、アイツの姿はない。

「ハイ残念!弘樹!」

「もう少しだったのに!」

俺達のいる植え込みの向こう側から柊と春日部の声がして、その隙に弟の隣りに移動した。

《残りは?》

《俺達だけだ。》

声を潜めて会話しながら思考を巡らす。

《弟…50Mのタイムどんくらい?》

《確か…6秒台だと思ったけど?》

…俺とどっこいか?

《俺が第一の囮になるから弟は次を頼む。》

つまり缶を蹴るのは楓になるわけだ。
少し考えてた弟が俺を見て楓に視線を移して。

《分かった。西野、頼むぞ?》

さすがは弟。
頭の回転もなかなかだから説明なんていらねぇもんな。

口元を緩めて、横に座る楓の髪を撫でながら。

《柊が鬼だから多分、俺達は捕まるから…お前はひたすら缶を目指せ。》

《ぼ…僕っ!?》

《アイツは馬鹿じゃねぇからだいたいの予測付けてるよ。囮を楓だと思ってんじゃねぇか?》

《最初が佐古だと次は西野だって思うだろうしな。》

弟と顔を見合わせニンマリ笑う。
見下ろした楓は…ヘタレ具合がピークなようで…なんか顔色が悪い。

《…別に生死がかかってる訳じゃねぇんだからもっと楽にしろよ。》

…握ってる楓の手が段々と冷たくなってく。
プレッシャー強過ぎ?


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