K I R I B A N
H ―柊SIDE―
気合い入れて屈伸してる所にお待ちかねのラブラブカップルが現れた。
「遅くなってゴメン!」
にこやかなヒメとは対照的に不機嫌丸出しのボスが俺を見付けて近付いてきて。
「なんでいきなり缶蹴りなんだ?」
「佐古センセイが突然ひらめいたらしくて…。」
訝しげな表情のボスが、咥えたタバコを携帯用灰皿でもみ消し溜め息を吐いた。
「じゃ始めようぜ!鬼、準備は?」
「オウッ!いつでもいいぜ!」
佐古の問いにグッと拳を握って答える。
呆れた顔したボスが何か言いたげに口を開くのと同時に。
「さ、拓真!隠れよ?」
笑顔のヒメがボスの腕を取り歩き出した。
そして俺は、缶に足を乗せて目を閉じ…
カウントスタート!
「1…2…3…」
ドタバタ慌てる気配と小声に聞き耳を立てて大体の予想を立ててみる。
「20…っ!」
目を開き辺りをグルッと見渡して……ん?
すぐ側の植え込みの隙間から片足が飛び出てる。
…これは…わざと?
違うなら相手は一人!
「芹公!」
腕を伸ばしてヤツの足首を掴んだ。
「うわわっ!何でわかったの!?」
…なんでもなにも…。
まあ、いっか。
取りあえず、捕獲した芹沢を檻に見立てたジャングルジムの中に促して缶に足を乗せ直す。
するとどこからか話し声が聞こえてきて、軽く聞き耳を立ててみる。
《ちょっ…ダメって…》
《いいから来いよ。》
《や…ッ…!》
…思わず苦笑い。
こんな健全な遊びをしてんのに盛っちゃってるんですか?
声の主は…言わずと知れたボスとヒメ。
背後にある大きな銀杏の木に忍び足で近付き覗き込むと…
抱き合ってキスしてる二人を発見した。
せっかく見付けたのに、見付けちゃいけなかったような気がするのは…俺だけ?
「お取り込み中スミマセンが…ボスとヒメ、見っけ!」
ルールではタッチしなきゃいけないので…ボスの背中と回されてるヒメの腕に触れて、ジャングルジムへと促した。
残るは愛しの弘樹と弟、佐古と西野だっ!!
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