K I R I B A N
D
陸橋の上を行き交う人の視線が痛い。
怒鳴り散らしたおかげで諸悪の根源はいつの間にか退散していた。
興奮の治まらない俺は大きく息を吐き、手すりに体を預けるように寄り掛かり空を仰いだ。
「大葉…ありがと。」
大きな瞳をキラキラさせて芹沢が俺を見つめる。
「…芹沢…帰るぞ。」
「え…えぇっ!?」
体を起こした俺は芹沢の手を握って元来た道を歩き出した。
「ちょっと…大葉?デートは?映画は?」
ごねる芹沢に振り向きもせず切符売り場まで来ると、諦めたような顔した芹沢が俺の分のも買ってくれて…一緒に自動改札を抜けてホームへの階段を上り始めた。
「大葉…怒ってる?」
しょげた顔して俺を見上げて唇を尖らせる。
…拗ねた顔も可愛い。
「…怒ってる。」
「ごめんね…?」
「ムコウのヤツラはあんな感じ普通なのかもしんないけど…俺は嫌だ。」
思い出しても腹が立つ。
あんなにベタベタ触りやがって!
「ごめん…。」
シャツの裾をキュッと引かれ…階段の途中で止まり後ろを振り返る。
「…許さない。」
キュッと噛み締めてる芹沢の唇に触れるだけのキスして…前に向き直って。
「…大葉?」
「次はちゃんと抵抗しろよな?」
そう言って手を繋いだ。
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