K I R I B A N
A
目的の駅に到着してホームに降りると、溢れる人の波にはぐれないように芹沢の手をとった。

「大葉…ちょっと避難しよ?」

その流れから抜け出て、備え付けのベンチに手を繋いだまま並んで腰を下ろす。

ふぅ…と溜め息を吐いた芹沢が前を流れる人の波に目を丸くする。

「凄い人だね…。」

苦笑いする顔に視線を向けて。

「朝のラッシュはこんなもんじゃないぞ?」

すし詰めの車内を思い出しウンザリする俺の手をギュッと握った芹沢が。

「朝のラッシュ…一緒に乗ってみたいな。」

そう呟いた。

あのラッシュ時に乗りたいなんて…?
と思い、ハッとする。

俺ん家に泊まって…朝、一緒に登校したい…って事か?

…顔が熱くなった。

「今度…ウチに泊まりにおいで?」

覗き込んだ芹沢の顔が赤くなり頬が緩む。

「いいの!?行く!絶対行く!」

身を乗り出してそう言う髪をそっと撫でた。

「大葉と…朝まで…ずっと…。」

益々頬を赤らめる芹沢に身体が疼く。

…可愛い。

無茶苦茶…可愛い!

「芹沢。」

「はい?」

繋いだ手を引き立ち上がり…階段を駆け降りて踊り場の隅でキスをした。

「おおば…?」

ギュッと抱き締め…何度も唇を重ねた。


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