K I R I B A N
C
「何飲む?」
やっとの事で、拓真と書いて"あくま"と読むヒトを振り切り奥部屋へとたどり着いた。
「あー俺、コーヒー!」
「ストレート?アメリカン?」
お!そこまでいいのか?
「アメリカン、いいか?」
コクンと頷いた久遠がそのままキッチンに向かい、俺は黙ってその後ろ姿を見つめる。
しかし…落ち着かねぇ。
奥部屋に着くなり購買所との境にある小窓に厚く引いてあったカーテンが開けられ、入口のドアも豪快に開け放たれて…なんつーか…俺って信用ない?
「はい。熱いから気を付けて。」
目の前に差し出されたマグを受け取り見上げた久遠がやんわりと笑う。
ふと…この感覚に覚えがあるような気がして。
「…そっか。」
「え?」
「かーさん、だ!」
「…佐古?」
この世話上手なトコと暖かいトコ…受ける感覚が何となくかーさんとダブる。
「久遠は、かーさんみたいだな?」
「…は?」
こんな感じだから、あのヤンチャな柊を大人しくさせたり頑固な大葉を叱ったり…ましてや、あんな俺サマと付き合えるんだろうな。
うん、間違いない。
「あースッキリした!」
「佐古…なに?なんで俺がかーさん?」
頭の上にたくさんの"?"
を浮かべる久遠を見上げて…涙が出る程に笑った。
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