K I R I B A N
B
購買部のガラス戸を開けて中に入ると、カウンターに座ってたアノヒトが優しく笑って…次の瞬間にはムッとした顔になった。
…最初の笑顔は久遠向けで次は俺か?
「…ンだよ佐古…。」
「露骨にヤな顔しないで欲しいモンですねぇ?」
俺達の対話を聞きながら苦笑いしてる久遠が拓真サンの方に歩いて行く。
「…智。」
丁度その隣りに差し掛かった時…腕を掴んで引き寄せられた久遠の細い身体がアノヒトの胸の中に収まって…。
俺の目の前だってのに…キス、しやがった。
「ちょ…ッ!たくッ!」
慌てて腕から逃れた久遠が俺をチラチラ見ながら少し上ずったような声をあげて。
「も…バカ!家じゃないんだから…」
「変わんねぇだろ。」
イヤ、変わると思うぜ?
少なくともここは学校の中だし、俺もいるしな。
…他人のキスなんて興味ねぇけど今のは不意打ちだったから、かなり焦ったっつの。
「二人きりじゃないんだからね!」
真っ赤な顔して怒る久遠を椅子に座って頬杖着いたまま見上げる拓真サンが不敵な笑みを浮かべた。
「お前の怒った顔、すげぇクる。」
「ば…!」
益々頬が赤く染まり次の言葉が出なくなったトコで…久遠の負けが決定。
アノヒト相手じゃ…苦労するよな。
ご愁傷サマ。
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