K I R I B A N
A
教室の前から並んで歩き出し、ふと気付く。

「…こんな風に話すのって初めてじゃねぇ?」

少し下げた視線の先で久遠が首を傾げる。

コイツの回りにはいっつも芹沢やら春日部っていう取り巻きがいるし、そのまた向こうにはアノヒトもいるからな…。

「そう…だね、初めて会った日以来かな?」

クスクスと楽しそうに笑うヤツを見下ろし、何となく思い出してた。

力で勝てないのは一目瞭然なのに、アノヒトを守る為に…俺に向けた真っ直ぐな瞳。

「お前って意外と気ィつえぇんだよな…。」

「そう?」

目を丸くする顔にはどことなく幼さが残るけど…あのファミリーの中では唯一のシッカリ者。

「あの時はビックリしたよ。」

「そっか?」

「拓真にケンカ売るなんて…。」

苦笑いをする横顔を見つめながら…身内だからこその感想に俺も苦笑い。

「やっぱ…アノヒトってつえぇの?」

「俺が知ってる限り傷付けられた事はないと思うよ?」

…さよか。何か脱力。
ハナっから俺の相手じゃねぇじゃん?

自嘲的に笑ったりして。

「あ、別に佐古が弱い訳じゃないよ?拓真が強いだけだから。」

…もしかしてフォローしてくれてんのかな?

やんわりと笑った顔につられて俺も笑った。


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