K I R I B A N
A
「…テキトーに座って?」
そう言い終わる前にテレビの真ん前にちゃっかり陣取ってる祐一郎を軽く睨む。
「弘樹はここだよ!」
あろう事かヤツが指定してる場所は…
床に座って足を開いたその間。
「ば…ばっかじゃないの!?」
ボッと顔が熱くなる。
付き合い始めのラブラブカップルじゃないんだからさ…!
抵抗する僕にひたすら笑い掛けるヤツを睨み付けるけど…その笑顔にも…弱いんだ。
ガックリと肩を落とすとオープニングのギターが流れ出して。
「ホラ弘樹!始まったよ!」
更に顔が熱くなる。
…けど。
ドキドキしながらそこに座った。
「やっと来たね?」
「…何もするなよ?」
分かんないなぁ…と楽しげに囁く息遣いにさえ身体が震えてしまう。
後ろから抱き締められて首筋に息がかかる。
それだけだって…。
「…ばか。」
「ん?」
画面には…今日どうしても見たかった人達が登場してるって言うのに…僕は気が気じゃない。
「弘樹…キスしていい?」
ホラ来た!
だからヤなんだよ…お前の側にいるの。
アゴに掛けた人差し指だけで後ろを向かされ…キレイな顔が近付いてきて…
ゆっくりと唇が重なる。
このキスが…
キモチイイから困る。
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