K I R I B A N
B
もがけばもがく程、締め付ける祐一郎の腕に力がこもる。
「も…ぅ!離せってば!こンの、ばか力っ!」
「なんだよ…何怒ってんだよ弘樹!」
バタバタと暴れる僕を部屋に押し込み後手にドアを閉めて。
「弘樹ッ!!」
大きな声出されて…驚いて見上げた祐一郎が怒った顔で僕を見下ろした。
「…何で怒ってんの?」
整ったキレイな顔が溜め息と共に困った表情に変わる。
「…ジーマニ行ったらもう帰ったって言うし、電話しても繋がんないしさ…。」
そりゃそうだ…電源切ってたんだから。
黙ったまま祐一郎をジッと見上げた。
「理由を…ちゃんと教えて?」
噛み締めた唇に祐一郎の唇が重なる。
それだけで…身体の芯が熱を持つ。
悔しいけど…
やっぱり僕はコイツに惚れてるんだ…って実感した。
「さっき…さ。」
「…ん?」
胸に顔を埋めて溜め息を一つ吐く。
「あのオンナ…誰?」
「……オンナ?」
コクン…と小さく頷く。
…すると。
「…ナニ、もしかして…駅ビルにいた娘!?」
すっとんきょうな声を上げるヤツをビックリして見上げる。
「…うん。」
「そうなんだ!?」
なにが…そうなんだよ?
訳も分からず呆然とヤツを見つめた。
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