K I R I B A N
C
駅までの道程を歩きながらいつもと変わんない先輩の顔を見上げてホッとする。
アンナコトした後だから…気恥ずかしくてどうしたらいいのか分かんなかったから。
「先輩…」
「一樹!」
ツッコミを入れられて…また慌てて呼び直す。
駅ビルに入った今でもうすでに四回目。
「…身に着かねぇな…。」
「…スンマセン。」
ずっと先輩って呼んでたのをイキナリだから…まだしっくりこなくて。
「今日…家で飯食う?」
グイッと引っ張られ地下の食品売り場へのエスカレーターに乗り込む。
「え…?」
「俺の料理の腕前、見してやっから。」
先輩…料理出来るんだ?
すげぇ新鮮だ。
正直、こんな売り場に来た事ってあんまないかも…親の作ってくれる飯をいつも上げ膳、下げ膳だから。
話によると先輩は両親が離婚して、姉ちゃんと付き合いだした頃から一人暮らしをしてるらしくて…。
そんな事を周りに気付かせない先輩は…すげぇ大人だな、って思った。
「何食いたい?」
「…肉。」
「ステーキ?バーグ?唐揚げ?」
「…全部。」
尻に一発、蹴りを入れられる。
楽しそうに笑う先輩を見上げて…やっぱり好きだなぁ…って改めて実感。
先輩が…大好きだ。
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