K I R I B A N
A
不意に、カバンの中から着信音が聞こえて慌てて携帯を取り出した。
「…あ!」
液晶に映し出された名前に一瞬怯む。
口から心臓が飛び出しそうな程ドキドキして…フラップを開く。
それを歩の手がパッとさらって行った。
「もしもし?」
「あッ…あゆむ!?」
取り返そうとする俺を手で制して背中を向ける。
「加藤です。え…今ですか?」
「歩ッ!」
「これから優太にキスする所です。」
「はぁっ!?」
パタン。
…勝手にフラップを閉じ通話を終了させて…。
「あッ!あゆ…!」
「先輩すげぇキレてた。」
ハハハッ!
…と楽しそうに笑って閉じた携帯を俺に放り投げてきて。
「な…」
「多分、猛ダッシュで来るからちょっと待ってな?」
カバンを小脇に抱えスタスタとドアまで行って…ゆっくりと振り返る。
「どんな顔もないよ。先輩がきたら素直に甘えればいいって。」
じゃあな…って手を振り歩が教室を出て行った。
…なんか…ハメられた?
イヤ。
応援してくれてるんだよな…?
呆気にとられながらも…顔だけは熱くなってく。
だって…先輩が…。
すると…バタバタと急に外が騒がしくなったと思ったら。
「優太ーッ!?」
勢いよくドアが開いて…俺の彼氏?が現れた。
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