K I R I B A N
I -柊SIDE-
「様子はどうだ?」
ソファに座り部屋の小窓から向かいの弘樹達の部屋を監視してる。
「分かんねーな…。」
ガン見してる部屋の中は薄暗くて…時折パッと明るくなったりしてるのはきっと、画像が入れ替わる時なんだろうな。
…しかし…。
「大葉…お前まさか普通に歌おうとしてない?」
振り返ると…案の定、組んだ足の上に置いた分厚い本をパラパラとめくってる所で。
「…駄目なのか?」
「あのなぁ…別に俺ら、一緒にカラオケしにきてる訳じゃねーだろが!」
「まあな…でも勿体ないだろうが。」
俺から外した視線はまたもや本に戻されて。
…もう勝手にしろ!
小窓の方に向き直り溜め息を吐いてると、何やら後ろでピコピコ音がして…マジ歌いかよ。
「柊…マイク…」
「いらねーから!」
振り返りもせずに言い放ってまた溜め息。
…頭堅そうなのに…意外と自由人なんだな。
「…あれ?」
正面の部屋の前に男が三人…しかも小窓から中を覗いてて…なんだ?
嫌な予感がする。
「オイ、大葉!」
「『セロリ』にしてみた。」
「曲なんか聞いてねー!ホラ行くぞ!可愛コちゃん達の危機だ!」
立ち上がった俺達は部屋を飛び出し、向かいのドアを勢い良く開いた!
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