K I R I B A N
A
あんなにカリカリしてたのに…僕は今、駅ビルの中のジーンズショップに来ている。
モチロン、佐古の誕生日プレゼントを買うため。
こんなに健気な自分をバカみたいだと思いつつ、やっぱり僕は佐古が好きなんだ。
惚れた弱み…ってヤツだよね。
店頭で苦笑いをする。
「あれ…西野?」
声の方を向くと最近仲良くなった隣りのクラスの久遠がいて…。
「もしかして…久遠のバイト先って?」
「ここだよ?」
やんわりと笑う久遠は清楚な感じのキレイな人で…芹沢が崇拝して春日部が信頼してるという仲良しグループのお母さんみたいな人、らしい。
ふと見下ろしたその左の薬指の…とても本人の趣味とは思えないちょっとゴツめの指輪に目がいった。
「これが…バラ色の鎖ってヤツ?」
指差すと…あからさまにうろたえた久遠が顔を真っ赤にして。
「な…なんで!」
「芹沢が言ってたからどんなかな?って興味あったんだ。」
しげしげと眺めれば…恥ずかしそうにそれを隠して笑って。
「一杯買ってってね。」
逃げるように店の奥に入って行った。
正直…羨ましかった。
きっと久遠は、ニイサンに凄く愛されてて…だからあんな風に愛の証を身に着けて。
「…佐古にも着けちゃおうかな?」
僕にしか分かんない…
僕の物だっていう証を。
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