愛のカタチ/1.5
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バレンタインが終わった後辺りから荷造りを始め、春休みに入ってから少しずつ地味に新居にそれを運び入れてた。

あの部屋にもあんなに荷物があったんだな…なんて今更ながらに思う。

でもそれも今日が最後。
長い長い旧部屋との往復生活からやっと解放されるんだ!
真新しいシンクの前に立ち人知れず一人ガッツポーズ。
大鍋の中の蕎麦を茹でてる箸捌きだっていつもより軽やかだ。

引っ越し屋でバイトをしてる柊達の協力のおかげで、そこで実際に使ってる2トントラックを借りる事が出来た。
そして本職(?)の柊、佐古、良介も汗だくになって手伝ってくれたから予定より早くに引越しは完了!
そのお礼にと、今俺は引っ越し蕎麦の準備の真っ最中なんだ。

「思ったより広いんだね。」

後ろから近付いてきた芹が俺の手から箸を取り代わりに蕎麦をグルグルと掻き回す。
俺はその間にネギを刻んで…と。

「ぁ…?」

急に視界がグラッと歪んで…慌ててシンクに手を付いた。

「くどー?どしたの?」

最近は荷造りと相変わらずの拓真とのセックスとで忙しくてあんまり寝てなかったからな。
…なんて普段の不摂生を反省しながらふとカレンダーを見上げる。
するとそこには…『エイプリルフール』の文字が。

ふっと悪戯心がわき上がる。

「ごめん…実は俺、今妊娠してて…」


カラン。


芹の手から…菜箸が落ちた。
えっ?と思って芹沢を見上げると…。

「お…オメデト、くどー!!」

「……は?」

「ベイビー、もう性別分かってんの!?」

「はあっ!?」

グンと上がった芹のテンションに思わず後ずさる。

「嬉しいなぁ…俺子供好きなんだよね!」
「おい…ちょっ、芹…」
「みんなに知らせてくるねっ!」

俺の制止も聞かず芹は満面の笑みのままバタバタとキッチンを飛び出ていった。


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あきゅろす。
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