愛のカタチ/1.5
E
「おい。」
かけられた声と共に右腕への軽いタップ。
ぼんやりとした意識を戻せばすぐ側には少しムッとしたような須藤さんの顔があって。
「聞いてんのか?」
低いトーンでの彼の問い掛けに言葉の代わりに苦笑いで答える。
「…まあ今更聞くのもなんだが、春日部とまたケンカでもしたのか。」
呆れた様子の須藤さんに今以上の苦笑いを返すと彼は"ウンザリ"って顔して、座ってる電車の二列シートに深く沈み込んだ。
出会ったばかりの頃に比べて今、この人と俺はプライベートを明かしあう程に仲良くなっている。
そして、元々弘樹を気に入っていた須藤さんとする俺のプライベート話といえば…やっぱり当然ながら弘樹とのそーゆー内容だったり。
「年がら年中ケンカばかりだな。お前らやっぱり合わないんじゃないのか?」
「合わなくないです!仲が良いからケンカするんスよ。」
溜め息混じりの声に間髪入れずに答えると須藤さんは隣に座る俺との間で手をヒラヒラとさせて。
「どっちでもいい。とにかくグチ言ってスッキリするなら言え。一緒に出掛けてんのにいつまでもそんな微妙な顔されてちゃかなわんからな。」
そう言って前のシートの背面に張られた物入れネットからお茶のペットボトルを取り出し、須藤さんはチラと視線だけコッチに向ける。
俺は…黙って何度か首を横に振って。
「ありがとうございます。その気持ちだけで十分ッスよ。俺…ちょっと電話してきますね。」
そう言って立ち上がり窓際に置いてた携帯を取るとフラップを開いてペア機能を立ち上げる。
車内の通路を足早に歩きながら俺は…大切なただ一人のペア、弘樹に電話をかけた。
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