愛のカタチ/1.5
H‐良介SIDE

会議室を飛び出し廊下をひたすら走る。
突き当たりに位置するあそこから直進した先は右側の渡り廊下と直線、そして左に折れた先の階段との三択。

「あ、委員長。」

声を掛けられ顔を渡り廊下側に向ける。
するとそこには七組のクラス委員二人がいて。

「ああ…済まない、うちの春日部と俺の恋人を見なかったか?」

そう問うと二人は顔を見合わせ渡った先の棟を指差し。

「その二人なら物凄い勢いで走ってトイレに駆け込みましたよ?」

「そう、だから俺達アイツら腹でも壊したんじゃないかって言っ…」
「芹が腹を壊すわけないだろう!!」

冷やかすような含み笑いにムッとして思わず声が荒くなる。
すると彼等はそんな俺に驚いたのか目を丸くして瞬きを繰り返した。

「ありがとう。」

抑揚なくそう言い彼等の横を走り抜けながら…芹が腹を壊さないわけこそないんだよな、と下らない事を考えてみたりした。

いつの間にか陽が落ち薄暗くなった渡り廊下を駆け教わったトイレに向かいその入口のドアの前に立つ。
ノブを軽く回すが予想通りに鍵がかけられていた。


ドンドンドン!


そのガラス部分を避けドアを叩く。
すると…意外に呆気なく鍵の外れる音がして、開いた中から春日部が出てきた。

「中のはた迷惑なワガママっ子の言い分聞いてやって。僕は帰るから。」

「ああ。済まなかったな、ありがとう春日部。」

俺の横を通り過ぎてトイレを出て行く小さいが頼もしい彼の背中を見送り開放されたドアに向き直る。


バタン!


「は?おい芹っ!!」

俺が振り向くと同時にアマテラスの岩戸はまた固く閉ざされてしまった。


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あきゅろす。
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