愛のカタチ/1.5
N‐拓真SIDE
『ごめんなさい…俺、拓真が好きなんです!アナタが俺を好きになってくれる前から……ずっと拓真が好きだったんです!』
…って。
お前…そりゃフェイントだろうがよ。
付き合い一緒に暮らし始めてから約半年。
俺が言わせたくて仕方ない言葉をこんなハッキリ言いやがった。
しかも…二人きりの時でもヤってる最中でもない、こんな公衆の面前で。
「…なんで今なんだよ。」
ボソリと呟く俺の声が聞こえぬ故に、俺の恋人は更に続ける。
「俺、色々あってもう恋なんてしないって決めてて…でも拓真を初めて見た時一目で好きになって…だから…」
普段はゆっくり穏やかにしゃべる智が言葉も選ばずただ、ただしゃべり続ける。
その必死な姿が…可愛くてとても愛しい。
「たとえあの時、碓井さんに告られても無理矢理ヤられちゃってても…俺…アナタを好きになる事はなかった。拓真が相手だから、また恋をしたいって思ったんです!」
…キた。
クソ…バカ碓井。
録音すんなら今のセリフを録っとけよ。
これは恐らくシラフの智からは絶対に聞けない一世一代の告白だぜ?
なんたってこの俺が…顔を熱くさせる程なんだからよ。
案の定、俺の恋人はそこまで言い終わってからその内容に気付いたらしく薄暗がりでも分かる程に顔を真っ赤に染めて俯いてしまい…他のギャラリーはそんな智をビックリ顔で見つめている。
…そして。
ズル…。
碓井は…余程ショックだったのか背後の跳び箱に力なく寄り掛かり顔を俯かせて。
「じゃあ…僕の勘違いだった…?」
そう小さく呟いた。
「そーゆー事。お前は…ただのストーカーだったんだよ。」
ヤツの目を覚まさせる為にハッキリ言ってやる。
ギャラリー共はそこで初めてこのトラブルの理由を知ったらしく…あの大人しい西野までが、まとう雰囲気をガラリと変えた。
俺は…つい今し方まで碓井をぶちコロシてやりたかったが。
「もう二度と智に近付くな。付きまとうな。」
…思いがけず聞けた智の気持ちがかなり嬉しかったから、そう言っただけで治めてやる気になった。
そしてヤツは…そんな俺を見もせず小さく"はい。"とだけ答えてデカく深い溜め息を吐いた。
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