愛のカタチ/1.5
I
佐古の部屋で…甘くほろ苦い時間を過ごしてから僕らは一緒に佐古家を後にした。
ホンの一時間いるかいないかだったのに…もう何日間も滞在していたような、濃密な感覚。
でも不思議と僕はこの佐古家が嫌いじゃなかった。
たとえそこに流れる空気が冷たくても。
それはきっと、ここが佐古の生まれ育った場所だからなんだと思う。
どんな内容でも…佐古の思い出の場所だろうから。
◇◆◇◆◇
握られた手を引っ張られ歩き続けてから数分。
少し先にあったハズの白い建物が…段々と近付いてきて。
「佐古、あの…もしやあれは…」
「ウチの病院。」
薄笑いを浮かべた顔が強張る。
…あんな話を聞いた後、いきなりそのご両親に!?
僕は…思わず手をギュッと握り締めた。
何もしゃべらないまま歩き続けて正門をくぐり敷地を進む。
するとなぜか佐古は目の前の巨大な建物には行かずにコースを少し左に変えた。
「…え?」
「正面はアウェー。こっちがホームだから。」
佐古の指差す方に視線を向けると、"アウェー"の三分の一くらいの…それでも十分に巨大な少し新しめの白い建物。
「こっちが救命救急の入ってる棟。ウチの親父さんがいる方。」
「おっ…」
"お義父さん"ですか!?
あっ…
別に結婚するわけじゃないからそう呼ばなくても…
…じゃなくて!
ここに来ての急展開の数々に…僕もそろそろ許容範囲がオーバー気味。
軽くめまいとかしちゃったりして。
それでも…さっき佐古が。
"ウチの親父さん"
と言った顔が僕の知ってる佐古の顔だったから…僕はホンの少しだけホッとした。
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