愛のカタチ/1.5
F

大きなベッドの上に置かれたハードブック並みの冊子。
それはクローゼットの奥深くにしまってあったアルバムで。

「これが小学校の時の運動会。」

パラパラとページをめくる僕の隣りで佐古が解説してくれるんだけど…なんか。

「ね、どうして…」
「どれも俺一人しか写ってないんだって?」

疑問を口にした僕にかぶせるように佐古がそう続けた。

どこのページをめくっても…写ってるのは表情の変わらない子供の頃の佐古。

雨の日も、晴れの日も。
体操着着てても…白いタイツで王子様の格好してても。

「俺の両親医者だからさ。子供のイベントごときで休むわけにはいかないんだよ。」

「え…。」

見つめた佐古は…この写真と同じ無表情で。
胸がチクンと痛んだ。

「それについでに言うと…ウチは楓ん家みたいに家族が仲良いわけじゃないんだよ。」

「そ……。」

"そんな事ない"…って言おうとして言葉を飲み込む。
僕はそう語れる程佐古の事…家の事情とか全然知らないから。

「母親が外科のお偉いで父さんは救急のトップでさ。だからなんかのイベントの時にはウチの執事がレフに三脚持って見にきてたんだ。」

そう言って笑う佐古はいつもと同じ楽しそうな顔してて。
その表情にホッとしながらも…胸の中はモヤモヤしてた。

…僕んちの両親は…。
仕事よりも家族が大事で。

イベントの度二人共仕事休んでまでハンディ片手に大騒ぎをしていて…僕は今までそれが当然なんだと思っていたから。

「なんか…ゴメンね。」

僕んちに来る度、佐古は居心地悪かったんじゃないかな…なんて思ってしまった。

すると佐古はフッと静かに笑って。

「楓はそれが普通だと思って育ってきたんだし俺もこれが普通だと思ってる。だからお前が謝る事はひとつもないよ。」

…そう言った。
僕はそんな佐古を見つめて唇を噛んで。

「イベントの時、一緒に写真撮ろ!みんなで!それで…たくさん、たくさん思い出作ろうよ!」

言葉の後半は自分でも何言ってるか良く分からなかったけど…言い終わった僕を見つめて優しく笑った佐古の表情がとても嬉しそうだったから。
だからきっと…気持ちがちゃんと真っ直ぐ届いたんだと勝手に思って僕もまた嬉しくなった。


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