愛のカタチ/1.5
F
…さすがに重過ぎるから僕の過去の話はせず、不仲な家族との橋渡しをゆうがしてくれた事とその条件として出された今の生活の話。
そして今朝の口論とお手伝いのあの人に言われたセリフ…の話をした。
思い返して話してるウチに僕のテンションはまた更に下がってしまった。
「うーん…。」
最後まで聞き終えた後、腕組みして渋い顔をする芹が誰にともなく頬を膨らませてみせて。
「そか…。」
眉をキツく寄せた西野が小さく唸る。
そんな二人と僕を交互に見ていた久遠は静かに立ち上がるとカウンターの奥のドアを開けて中に入って行った。
「だから佐古は春日部の事をジュリエットって呼ぶんだね?」
…って言いながら西野がウンウンと頷く。
僕の話で一番印象に残ったのはそれか?
西野らしさにちょっと脱力。
「好きな人ともっと自由でいたいよね…なんか分かるなあ、それ!」
芹からのまともな回答に僕は思わず凝視してしまった。
すると芹は僕の視線の意味に気付いたのか膨らませた頬をもっと大きくして。
「俺だって恋する男子なんだから分かるよ!」
顔を赤くしてあかんべなんてしてきた。
「はいよ。」
スッと目の前に小さなマグが差し出されて顔を上げれば…立ち上ぼる湯気の向こうに優しく笑う久遠がいた。
「…ちゃんと分かってるんでしょ?」
マグを受け取る手が止まる。
僕は…黙って頷いた。
そう…これは全て僕のワガママ。
状況もゆうの気持ちも全部分かってて…なのに。
「柊も相当気にしてるだろうから…メールでもしといてあげたら?」
それぞれマグを受け取りながら二人も頷く。
僕は…黙って一度だけ頷きゆっくりとまだ熱いココアをすすった。
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