愛のカタチ/1.5
G‐良介SIDE
坂を駆け降り駅前のロータリーで足を止める。
…どこに行けばいい?
追いかけるにも…行く先を聞かずにいたため場所が分からない。
焦る気持ちを必死に抑え前に芹から聞いていた芹沢の家の話と、さっきのエリザベスさんとの会話の所々の英単語を拾い上げて手掛かりを探った。
「っ…確か…」
コンビニの前で頭をかきむしりひとつひとつを思い起こす。
仕事の事、ご飯の事、飛行機の事、試験の事、学校の事、進路の事……そして。
「…そうだ…」
過去の芹との事で思い出したのは…親父さんが帰国した時に滞在したホテル。
あそこを確か【芹沢家御用達】と呼んでいた。
だとすると…。
「いや…しかし彼女が芹の身内とは限らない。」
むしろ身内でなかったら…考えたくない結論に達してしまう。
「芹…」
唇を噛み締め携帯を開き…何度かけても電波の届かない番号を見つめて眉をしかめた。
◇◆◇◆◇
結局。
どんな答えにも辿り着けずただひとつの手掛かりである場所へと向かった。
電車を降り、改札を抜けて…駅側にある見るからに宿泊費の高そうなホテルを見上げる。
「…またここにくる事になるとは。」
ここは…前に一度だけ訪れた【芹沢家御用達】の高級ホテル。
初めて俺と芹がひとつになった…とても尊い思い出の場所。
短く息を吐き出してその正面入口に進み…ドアマンの開けてくれた大きなドアから中へと入る。
きらびやかなライトの光に一瞬目がくらみつつ…フロント前に立って。
「すみません。こちらにエリザベス…芹沢さんはお泊まりでしょうか。」
…そう聞いた。
するとフロント奥にいた初老の男性が静かに近付いてきて。
「失礼ですが…お客様は"大葉良介"様でございますか?」
突然そう言われ驚いて彼を見る。
「芹沢様より、大葉様がいらっしゃいましたらお部屋へお通しするよう申し付けられておりますので…ご案内させていただきます。」
ペコリと頭を下げたその人は…カウンターから出てきてエレベーターの方を向き。
「こちらです。」
上に向けた掌の先で俺を促す。
ゆっくりと歩き出した彼の後に続き、開いたばかりのエレベーターに乗り込む。
大きくなっていく数字を見上げながら…溜め息にも似た短い息を吐いた。
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