愛のカタチ/1.5
E
駅前からタクシーに乗って我が家御用達のホテルに到着した。
だだっ広いエントランスを抜けてエレベーターに乗り込み壁に寄り掛かってひとつ溜め息を吐いて。
『…父さんは…どうしてる?』
ドアの前に立ってるリズの背中にそう聞いた。
『相変わらずよ。』
『…そっか。』
チン。
軽い音と同時にエレベーターが最上階に着いてドアが開く。
そこを真っ直ぐに進み突き当たりの白い扉のロックを解除したリズに促されて中に入った。
ここは…。
「…大葉。」
『え?』
この部屋は…
俺と大葉が初めてエッチした場所。
ずっとなりたかった…
"誰かの物"になれた思い出の場所。
『疲れた顔してるわ。』
肩を抱かれてリビングを進み…ソファに腰を下ろす。
複雑な顔したリズがお茶の支度をしてくれてる後ろ姿を見ながら何だろ。
物凄い違和感と淋しさを感じた。
『タイチ…もう寝た方がいいわ。』
『え…でも…』
目の前に置かれたティーセット。
そのカップを両掌で包んで俺の大好きなオレンシペコにふっと息を吐き一口飲んだ。
『今日会った時は見違える程良い顔をしてたのに…"リョウスケ"と別れてからはずっと昔みたいな顔してるわ。』
"リョウスケ"って名前に反応してカップを持つ手が止まる。
それを気付かれないように…ゆっくりとまたオレンジペコを喉に流し込んだ。
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