愛のカタチ/1.5
N
正門前に停めた車に寄りかかって空を見上げて…心の中にポッカリと穴が開いてしまったような変な感じに苦笑いをした。
…すると。
体を預けている車が少し揺れ、視線を落としたすぐ右隣りにはタバコを咥えた拓真がいて。
「あ…お疲れさま。」
俺は慌てて車から体を離した。
「…おう。」
小さく答えた拓真がコートの内ポケットから愛用のジッポを取り出し咥えてるタバコの先に火を点ける。
ほんのりと匂うオイルの香り。
薄ぼんやりと立ち上ぼるタバコの煙を見ながら俺は…また空を見上げた。
「…お前が自分で言えるなら俺は構わねぇぞ。」
突然の声にその主の方を見る。
すると拓真はタバコを離した唇から俺とは逆の方へ煙を吐きだしながら。
「はしゃいでる芹とガラにもなく浮ついてる良介に…あの猫はウチで育てる、と言えるならウチで飼ってもいい。」
「…なに…急に。」
胸がドキドキした。
俺…バレちゃう程、外に出しちゃってたのかな?
隠してたつもりだったのに…。
クシャッ。
伸ばされた拓真の指が俺の髪を軽く乱し…額に唇が触れる。
そのまま抱き寄せられて…唇が重なった。
「正直、面白くはないがな。」
「…え?」
顔を上げて見つめる先には俺の大事な恋人の…苦笑い。
「俺に寄越すハズのお前の愛が…ホンのちょっとでも余所に向くのは面白くねぇ。」
…なんて言うから。
「ぷっ…」
思わず笑いが出てしまった。
「…んだよ。」
「だって…拓真、真顔でさ…」
猫相手にこんなヤキモチを焼くなんて。
笑ってるのに…なぜだか涙が零れた。
「…んで、どうすんだよ。」
そんな俺に気付いてか目元を親指で優しく拭ってくれながら、またやんわりと抱き締められて…俺は。
「大丈夫だよ…。」
そう答えて細い拓真の体に両腕を回した。
「少し淋しいけど…俺には拓真がいるから大丈夫。」
優しく髪を撫でてくれる手を握り指を絡めてそう告げると…拓真は少し笑って俺の額にキスをくれて。
「猫と同レベルってのが気に入らねぇが…まあ良しとしてやるよ。」
唇に…暖かなキスをくれた。
抱き合ってお互いのぬくもりを感じて、愛しい人の優しさを再認識する。
そして俺は…たとえられない程の幸せにまたどっぷりと浸かるんだ。
「今夜は…猫に邪魔されねぇからゆっくり出来そうだな。」
冗談まがいな拓真の声に緩む頬を抑えながら…何度も頷き、愛しい恋人を強く抱き締めた。
―END―
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